『夏のあらし!』7話 (オターを待ちながら篇)

卒業論文が『魔法先生ネギま!』論だったことで名高いH氏が家へやってきた。せっかく一つの部屋に二人のアニオタがあいまみえたのだから一緒にアニメを見ようとの話に。誤解して欲しくないのは二人のオタが同じ画面を見つめ続けるという行為はカップル同士で行われるそれと全く意味が異なることだ。後者であれば「面白かったねー」「うん良かったー」で話を打ち切って性行為へスムーズに移行できるだろうがオタは違う。アニオタにとってのアニメ視聴は自分のオタ力が試される一対一の真剣勝負に他ならない。平等に与えられた30分*1からどちらがより多くのものを引き出せるか。己の動体視力を賭けたケンカ祭り、肉と肉のぶつかり合いなのだ。視聴後に禅問答が繰り広げられるのは必至。セックスに励む余裕などない。
視聴作品は『夏のあらし!』7話。両者共に6話まで視聴済み。五分五分の関係、いや違う。アニメを見るのはおれの家おれの部屋おれのテレビ。アナログテレビでアニメを見ているH氏にとって地デジ対応テレビ(42型)は余りにも大きく16:9の画角は余りにも広い。ホームの優位性を鑑みればおれの勝利は確定的に明らか。これで勝つる!
しかしこの時点でH氏のテリトリーに足を踏み入れてしまっていることに気付く余地もなく、放送時間の25:30が近付いてきたのでテレビの前に待機。視聴。大の大人二人が無言のままテレビ画面を凝視し続ける奇妙な30分。流れるエンドカード。終わった。よし、ここは先制攻撃だ!

おれ つなぐ方向が逆だった所あったよね
H氏 そんなのあったっけ?

よっしゃ先取点ゲット!

おれ ほら、ここ(レコーダーを操作して13:30あたりに合わせる)
H氏 本当だ。カヤが向いてる方向とは逆から出てくるね。コレってカヤがタイムトラベラーだからかな

あーそこまで考えてなかった。なるほどー。でも今回の話だと同じくタイムトラベラーのあらしは別に逆から出てきたりしないしなー。どう言い訳するかなー。と考えてたらH氏の猛攻が始まった。

H氏 途中で写真っぽい背景の所あったじゃん
おれ え、そんなのあったっけ?
H氏 ほら、ここ (13:30)
おれ あ、ホントだ。街並が写真を加工した感じっぽい。
H氏 そんでここにカヤの「懐かしいわね」ってセリフが重なってるけど、これってカヤにとって全然懐かしいものじゃないでしょ
おれ アイツは戦時中からタイムスリップして来たわけだから
H氏 で「懐かしいわね」は「日舞」って言葉を聞いて出たセリフなのに、写真加工っぽい背景だけを映してる。変でしょ
おれ 変だね
H氏 さっき見たカヤが登場するカット (13:30) は背景真っ白。足元にタイルが描いてあるけどパンアップすると真っ白
おれ あーホントだ
H氏 さらに彼女が出てきた右側に向けて白いグラデーションがかかってる
おれ あーマジだ
H氏 その後、カヤは日本舞踊を踊るシーン (15:00) そこで背景が白っぽいピンクになってボンヤリとサクラが映る。夏の話なのに。ドイツ人のカヤが日舞を踊るのもポイントだと思うけど
おれ あー
H氏 だけど潤の場合は違う。ピンクっぽい背景の奥に街並が透けて存在していて、舞踊が終わるとピンクが剥ぎ取られて街の背景が露出する (15:30)
おれ あーあー
H氏 つまりコレってタイムスリップして来たので現実に自分を位置付けられないカヤと、自分が女だという現実に嫌でも直面させられてしまう潤の対比でしょ。
おれ あーあーあー
H氏 だから舞踊が終わって潤と共に街の背景に置かれてしまったカヤは赤面して逃げることしかできない。転ぶことで自分の姿すら消してしまう (17:00) カヤは通常の背景の中では生きられない人だからBパートもやけに逆光が多いし、戦争体験を語るカットでは明らかにタッチの違う油絵風のひまわりが描かれている(21:45)だけど潤が叫ぶことによって白黒の線画を消し去り (22:30) 涙を流すカヤの後ろには森の風景が広がる。この二人のエピソードは風景のパンアップで終わるけれど (22:45) 下は写真加工っぽい街なのに対し上は明らかに嘘っぱちな雲でこれは(以下略)

か、完敗だ。なぜ一回見ただけでこんなに喋れるんだ。化物か。そうだ『夏のあらし!』はシャフト制作。そしてH氏が卒論で優を獲得した『魔法先生ネギま!』第二期シリーズもシャフト制作。そう、シャフトはH氏の得意分野だったのだ。畜生、テリトリーを打ちやぶれなかった。そしてH氏は勝者の戦利品として『王様はロバ』全巻とTENGA FLIP HOLEを奪って帰って行った。*2

*1:もちろんCMもその対象

*2:あと (12:30) あたりの街を真俯瞰で映したカットって動いてないのに動いて見える錯視だよね。そこらへんからもっと何か言えそうだ