Angel Beats!のフラッシュフォワードについてのお話

Angel Beats!』見終わった。10話が面白かったのでその説明。
Angel Beats!』は全編を通してフラッシュバック、いわゆる回想シーンが数多く出てくる。例えば登場人物たちが前世のトラウマを喋る所とか。ちょっと違うけど「さっきは何だったんだ」ってなセリフを言わせて、少し前に見たばっかの映像をセピア色にしてもう一度使ったりもする。つまり過去の出来事が挿入される場面が多いのね。まぁ前世をうまく生きられなかった人達の話なのだから過去に拘泥してるのは当然なんだろう。
そんじゃその逆であるフラッシュフォワード、未来の出来事が挿入される場面はというと「本編」には一度しか出てこない。それが10話のユイが来世に転生するため消える場面。少し詳しく見ていこう。
恋人役の日向が「また60億分の1の確率で出会えたら そん時もまたお前が動けない体だったとしても お前と結婚してやんよ」とユイに告白。寝たきりだから出会えないとその来世を否定するユイに対して、野球やってるから家の窓ガラスをボールで割った時に会うって感じのことを言う。そんで会話が終わると場面が飛んで、日向の語った来世の映像が流れる。これがフラッシュフォワード。時制が現在に戻るとユイは消えている。
不真面目な視聴者であれば「別に未来の出来事とは限らないじゃん。妄想かもしれないし」と水を差すかもしれない。だがそれは間違っている。二人は来世で絶対に出会える。あの映像は必ず起きる出来事なのだと確信を持って言える。というのも『Angel Beats!』の視聴者は未来の映像を毎回目撃してきたはずなのだ。提示された未来が妄想や幻覚などではなく実際に起きる事実だと「本編」の中で繰り返し確認させられてきた。
思い出して欲しい。なぜ『Angel Beats!』はオープニングアニメーションで、それもメインとされるサビの部分で、今から始まる「本編」の映像を見せているのか。作画の節約? スケジュールが間に合わなかった? そんなはずがない。今から始まる「本編」の映像は未来に他ならない。その必然性を証明するためだ。OPに流れた未来は「本編」で目撃されることにより現実へ変わる。私たちはOPで流れた映像が本編で使われるのを毎回のように見てきたはずだ。話数ごとに再編集されたOPは常に未来を提示し続け、私たちはそれを見ることで現実へと昇華してきた。
そのOPは10話で突如無くなる。もちろんこれは未来の消失を意味するわけではない。消えたOPの代わりにユイのフラッシュフォワードが立ち現れるからだ。あの告白はOPの変奏に他ならない。OP=告白となり「本編」=「来世」が挿入される。だからこそ告白シーンでは歌が、まるでオープニングソングかのように流れているのだ。サビと同時に「来世」が表れる同一性までも備えて。そして「本編」が現実に起きたのと同じように「来世」も必ず訪れるだろうという余韻を私たちに残してくれる。
ユイにとって『Angel Beats!』の世界はこれからはじまる「本編」のオープニングアニメーションのようなものだったのかもしれない。