私みる人 僕みられる人

就活は失敗して来年からニート確定っぽいし、これはアニメに癒してもらうしかないなーと思ったが春の新番組を調べるほどの体力は無いので『クレヨンしんちゃん 爆発! 温泉わくわく大決戦』を見た。頭空っぽにしてメカやお色気を楽しもうとしたけれど『河童のクゥと夏休み』を経験した後では原恵一氏の挑発的な描写が嫌でも気になってしまい安心して見られん。
敵の首領Dr.アカマミレが巨大ロボで大暴れしたあとテレビを点け、一斉に特別報道番組へ切り替える各局の様子を見て満足そうに微笑むが、普段通りアニメを流しているテレ東に気づきキレる。というシーンが挟まれるのだけど、これって自分のブログのアクセス数やらアンテナ登録数やらを逐一調べ、エントリー上げるたびにブックマークコメントを気にする自意識過剰なブロガーと同じじゃないか。特別番組に切り替えないテレ東への怒りは「畜生! id:〇〇(ココには自分の好きなブロガーorブックマーカーの名前を入れる)なぜおれのエントリーをブクマしないんだ!」という怒りとそう変わらん。自分の悪事がどのように報道されているか確認をするDr.アカマミレと自分のエントリーがどのように言及されているかを確認するブロガーは、自分を見ている人を見ることによってアイデンティティを保っている点において同じ人種だ。『温泉』が公開された99年から10年経って世の中はアカマミレまみれになってしまった。
『温泉』ではギャグとして扱われていた見ている人の描写も『河童』では牙を向ける形で表現されている。テレビ収録シーンで執拗に挿入されるスタジオ観覧者が、劇場へ映画を見にきた観客のようにしか見えない点*1において、ただ見ているだけの自分達が作中の登場人物へと変わる逆転が起きる。そして見るだけの行為は悪だと言わんばかりにスクリーンに映った自分達に割れたガラスが降り注ぐ天罰が下る。『河童』を見たときに覚える居心地の悪さは、見ているだけという安全なポジションを奪われてしまうことに起因する。軽い気持ちで『朝まで生テレビ!』の観覧へ行ったら田原総一郎から突然コメントを求められ適当に返答した所ことごとく論破されてしまった様子が全国に流され後日田舎の母親から「あんたテレビでなんばしとっとね! お母さんみんなの笑いものになってるたい。なんのためさ東京の大学へ(以下嗚咽)」とお叱りの電話を受ける事態になりかねないデンジャラスさを内包しているアニメの怖さを、わざわざ映画を見にきてくれたお客にケンカを吹っかけることで身をもって体験させてくれる原恵一監督は偉い。
もし原監督がブロガーだったらはてなブックマーカーは大嫌いだと思う。そんでブックマークに逐一コメント返しを行い、見ているだけの人を無理矢理マウンドに登らせボコ殴りにする武闘派ブロガー。さらにブックマークもコメントすらもしない無言の閲覧者に対してもハッキングを仕掛けて攻撃してくるやっかいなタイプとして大活躍していたんじゃないだろうか。*2

*1:真正面を向いているカットが多かったり、段々に座るタイプの観客席にしたあたり、わざとやってるよなーと思った

*2:あとラストでクゥを箱に入れて見えなくすることや、クゥを見つけるのではなくつまづいて気付くという出会いが選択されていることから何かこじ付けられないかなーと思ったけどDVD見てからにしよう