『8月のシンフォニー』面白かった。

見た直後は「予想よりは面白かったなー」程度だったけれどハシゴした他の映画を見ながら「結構面白かったんじゃないか」と考え直し、帰りの電車の中で「もしや滅茶苦茶面白かったのでは」と興奮し、家に着き「そこまでじゃないけどまぁ面白かったなー」に落ち着くほど面白かった。分かりやすく例えるなら、今年のアニメは何が良かったと尋ねられた時「僕は、8月のシンフォニー・・・だね・・・」と呟くことにこの身を賭ける人生もアリかなと思わせる面白さで『ヱヴァ:破』や『サマーウォーズ』や『ラブプラス』では大いに盛り上がるが『8月のシンフォニー』には黙殺するオタへ殺意が湧く面白さでもあり、しかし『ラブプラス』は声優が気になるのでちょっとやりたいなーと日和ってしまうほど面白く、映画館で見ておいて損はないかなーくらいの面白さだと思うが、おれは「見て損した」って気持ちが良く分からんので少し困ってしまう面白さだ。以下面白かったとこ。
8月のシンフォニー』では上京した主人公と福岡に住む母親、二人の電話でのやりとりが繰り返されるがそこでは母親の姿が周到に排除されている。電話では決まって東京の主人公が映され、母親は姿を見せない代わりに声だけを響かせる。どうやら母親は電話で声を届けることはできても、電話する姿を晒すことは固く禁じられているようだ。普通の作品ならば当然のように電話口の二人が交互に映されるが『8月のシンフォニー』ではそうならない。母親にとって電話で場所を、福岡と東京を繋げることはタブーなのだ。だから母親が姿を見せるには主人公の帰省を待たねばならなかった。*1
しかし中盤その禁忌が破られる。主人公が電話を取ると唐突に場面が福岡へ飛び、電話をかけた母親の手が映し出されてしまう。今までなかったその展開に観客は「何か起こるのでは」と身構え、やはり何かが起こるのだが、その何かはまぁよいとして、重要なのは母親がついに電話で福岡と東京を繋げてしまったことだ。場所を繋げてしまった瞬間をキチンと見せてくれただけで結構満足したのだけれど、それだけじゃなかった。
主人公はその後なんだかんだで全国路上ライブを決意。するとスクリーンは主人公の歌をバックに様々な名所が流れる実写に切り替わる。驚きながら見ていると、それらはどうも彼女が路上ライブをした場所らしい。とその瞬間、母親が電話で福岡と東京を繋いだのと同じように主人公は歌で全国を繋いだことに気付かされ、あぁこの二人には親子の血が確かに流れているんだなぁとぽかぽかしてしまった。とここで終わっても良かったのだが、さらに主人公は歌でアニメやら実写やら2Dやら3Dやらも繋いでしまうのでもうこれは何なんだかよく分からなくなってしまい、その上1回見た記憶を頼りに書いてるので本当にそんな場面があったのかさえ不安になってしまったのでここらへんでおわり。

*1:過去の母親は主人公の回想シーンに出てくる。あと写真もあったかな